10年放置した銀行口座はどうなる?休眠預金の移管と引き出し方
OTOKURU MONEY GUIDE 2026.08 ¥10年動かさない口座の行方

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本記事の信頼性とお約束
10年動かさなかった口座のお金は、銀行から預金保険機構へ移されます。ただし、あなたが引き出す権利は消えません。期限もありません。唯一の例外が、郵政民営化前に郵便局へ預けた郵便貯金です。
預金保険機構が2026年6月30日に公表した資料によると、令和7年度に移された休眠預金等は586万9,928件・1,870億8,027万3,439円。同じ年度に持ち主へ払い戻されたのは54万5,396件・587億3,378万2,888円でした。件数でみれば、移る側のほうが10倍以上多い状態が続いています。
この記事で扱うのは3つです。いつ休眠預金等になるのか。移る前に何が届くのか。そして、窓口に何を持っていけば戻るのか。あわせて、通帳の記帳で止められるかどうかが銀行ごとに違うという実務上の落とし穴と、郵政民営化前の郵便貯金にだけ存在する「権利が消える期限」も取り上げます。
数字と条文はすべて出典URLを添えました。制度の運用には金融機関ごとの差があるため、最終的な確認先は取引のあった金融機関です。
目次(クリックで該当セクションへ)
10年動かさない口座は、いつ休眠預金等に変わるのか?
休眠預金等とは、入出金などの異動が最後にあった日から10年を経過した預金等をいいます。預金保険機構は、対象を「平成21年(2009年)1月1日以降にあった入出金等のお取引から10年以上、その後の異動がない預金等」と説明しています。
ここに落とし穴がひとつ。2009年1月より前が最後の取引だった口座は、この制度の対象外です。金融庁のQ&Aは、2019年1月時点ですでに15年や20年動いていない預金について「休眠預金等にはならず、本制度の対象外です」と答えました。そのうえで、そうした預金についても通常は金融機関が引き出しに応じている、と付け加えています。制度の外にあるだけで、お金が消えたわけではありません。
金額の下限もありません。金融庁のQ&Aは、Q5「休眠預金等になる預貯金などの額に基準はありますか。」に対して一言、こう答えています。
対象になる商品と、ならない商品も分かれます。普通預金や定期預金は入りますが、外貨預金や財形貯蓄は入りません。判断の軸は預金保険・貯金保険の対象かどうかです。
| 区分 | 該当する商品(金融庁の表記) | 10年経過後の扱い |
|---|---|---|
| 「預金等」に当たるもの | 普通・通常預貯金、定期預貯金、当座預貯金、別段預貯金、貯蓄預貯金、定期積金、相互掛金、金銭信託(元本補填のもの)、金融債(保護預りのもの) | 休眠預金等として預金保険機構へ移る |
| 「預金等」に当たらないもの | 外貨預貯金、譲渡性預貯金、金融債(保護預りなし)、財形貯蓄、仕組預貯金、マル優口座 | この制度の対象外。扱いは各金融機関の判断 |
| 別制度で動くもの | 2007年10月1日(郵政民営化)より前に郵便局へ預けた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金 | 休眠預金等にならない。満期後20年2か月で権利が消える(後述) |
定期預金には別の起算ルールがあります。預入期間や計算期間の定めがある商品は、その期間の末日から10年です。自動継続扱いのものは、最初の期間の末日が起点になります。10年前に預けて放っておいた5年もの定期は、満期から数えるとすでに5年が過ぎている計算です。
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移管前に届く通知と、金融機関の電子公告
移管はいきなり起きません。法律は金融機関に、公告と通知という2段構えの手続きを義務づけています。起点は最終異動日等から9年が経過した時点です。
まず公告。休眠預金等活用法第3条第1項が金融機関に命じているのは、9年を経過した預金等について公告することです。期限は最終異動日等から10年6月を経過する日まで。中身は、最終異動日等に関する事項、移管金の納期限、債権が消滅する旨などと定められています。場は各金融機関のウェブサイト上の電子公告で、個別の口座番号や名義人の名前は載りません。
次に通知。同条第2項は、公告に先立って預金者へ通知を発するよう求めています。ただし例外があり、9年を経過した日の元本額が「主務省令で定める額」に満たない場合は通知が不要です。その額を決めているのは、施行規則第7条第4項です。
この通知には、もうひとつ効き目があります。金融庁のQ&Aは、通知を受け取ることでその後の10年間は休眠預金等にならない、と説明しています。逆にいえば、通知が届かない口座は止まりません。届かない典型が2つ、Q14に挙げられています。残高が1万円未満のときと、住所変更を届けていないときです。
公告と通知がいつ行われるかは、金融機関ごとに違います。金融庁のQ&Aは「お取引などの異動が最後にあってから9年が経過し、10年6ヵ月を経過するまでの間に行うこととされています」と書き、その中のいつになるかは金融機関ごとに異なると添えています。実際の公告を1枚見てみましょう。
納期限は法律上の期限であり、実際の納付日とは異なる、とこの公告自身が注記しています。つまり期限ぎりぎりまで待つ前提で予定を組むのは危険です。もっとも、後述するとおり移管された後でも引き出せるため、この日を過ぎたからといって諦める必要はありません。
記帳すれば止まる、は銀行によって違う
「たまに記帳しておけば大丈夫」。よく聞く対策ですが、これは銀行によって当たりも外れもします。理由は、異動事由が2階建てになっているからです。
1階部分は全金融機関に共通します。施行規則第4条第2項が定めるのは3つだけ。①引出し・預入れ・振込みの受入れなどによる債権額の異動(利子等の支払を除く)、②手形または小切手の提示など第三者による支払請求、③公告の対象になっている預金への情報提供の求め。ここに記帳は入っていません。
2階部分が同条第3項です。通帳の記帳や繰越、残高の確認、契約内容や顧客情報の変更などが並びますが、これらは金融機関が行政庁の認可を受けた場合にだけ異動になります。認可を取るかどうかは各行の判断です。だから同じ「記帳」でも、扱いが割れます。
| 金融機関 | 通帳記帳の扱い(各行の公表内容) | 確認できる資料 |
|---|---|---|
| ゆうちょ銀行 | 異動事由となる取扱いとして「通帳や証書の発行(再発行含む)、通帳記帳、通帳繰越」を掲載 | 「休眠預金等活用法に係るお取り扱いについて」 |
| 三井住友銀行 | 「預金通帳の記帳(記帳する取引がなかった場合を除き、一部記帳においては2017年12月25日以降に限ります。)」と条件つきで掲載 | 「休眠預金等活用法に係る異動事由について」 |
| 三菱UFJ銀行 | 「(一部の例外を除き、利息の入金、通帳の記帳だけではご利用があったとはみなされません)」とFAQに記載 | 「長期間使用していない預金等のお取扱いについて」(2026年3月31日現在) |
三菱UFJ銀行が公表している認可取得の一覧を開くと、普通預金について認可を受けた事由は施行規則第4条第3項の第2号・第3号・第5号・第6号と書かれています。記帳と繰越にあたる第1号は含まれていません。同じ一覧で、定期預金やスーパー定期、通知預金には第1号が入っています。FAQが言う「一部の例外」はこちらのことで、記帳が効くかどうかは同じ銀行の中でも商品によって変わります。
三井住友銀行の「記帳する取引がなかった場合を除き」という条件も見逃せません。通帳を機械に通しても、印字される取引がなければ異動にならない、という意味になります。10年動いていない口座は、まさに印字される取引がない口座です。
令和7年度に移った1,870億円はどこへ行ったのか?
移管されたお金は預金保険機構がいったん預かり、その一部が民間公益活動の原資になります。預金保険機構が2026年6月30日に公表した令和7年度の実績は次のとおりです。
| 項目 | 令和7年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 納付された休眠預金等移管金の額 | 187,080,273,439円 | 169,452,094,528円 |
| 移管金に係る休眠預金等の数 | 5,869,928件 | 6,316,135件 |
| 支払われた休眠預金等代替金の額 | 58,733,782,888円 | 52,266,556,193円 |
| 代替金に係る休眠預金等の数 | 545,396件 | 508,960件 |
出典は預金保険機構「令和7年度中の休眠預金等移管金の納付の状況等について」(2026年6月30日公表)および「令和6年度中の休眠預金等移管金の納付の状況等について」(2025年6月30日公表)。
この表を割り算すると、性格の違う2つの平均が出てきます。編集部が計算したところ、令和7年度に移管された1件あたりの平均は約3万1,871円。いっぽう払い戻された1件あたりの平均は約10万7,690円でした。取りに来る口座のほうが、移っていく口座より3.4倍ほど残高が大きい計算になります。
金額が大きい口座ほど、持ち主が覚えているということです。移管の件数を押し上げているのは、本人が忘れている小口の口座になります。
では、戻らなかったぶんはどうなるのか。法律の建て付けはこうです。
将来の払い戻しに備えて、預金保険機構は準備金を積んでいます。令和7年度末の準備金は3,241億1,520万1,982円。ここから先の余剰が、内閣総理大臣に指定された指定活用団体へ交付されます。指定を受けているのは一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)で、2018年に指定されました。
内閣府の説明によると、助成の総額は通常枠と緊急枠を合わせて約354億円(2025年4月末時点)。資金分配団体は延べ342団体が選定され、227の事業が動いています。実行団体は1,368団体、1事業あたりの助成予定額は平均1,573万円です。これらはいずれも2025年4月末時点の数字です。使い道は、子どもや若者への支援、生活を営む上で困難を有する者への支援、地域活性化への支援の3分野に限られています。
現金を使う場面が減り、口座の出番が減っている影響も無視できません。決済手段の移り変わりはキャッシュレス決済比率58%の内訳と家計での活かし方で数字を追っています。
引き出しは窓口へ。持ち物と、戻ってくる金額
移管された休眠預金等の引き出しは、取引のあった金融機関の窓口で行います。期限はありません。金融庁のQ&Aは、移管された休眠預金等を引き出す期限について「期限はありません。いつでも引き出すことができます。」と答えています。
手順そのものは難しくありません。
- 通帳とキャッシュカード、本人確認書類を用意する。金融庁のQ&Aの表記は「通帳やキャッシュカード、本人確認書類など」で、これで全部とは書かれていません。三菱UFJ銀行は届出印を含む4点を挙げています
- 紛失していても諦めない。Q19の答えは「通帳などを紛失している場合であっても、本人確認書類(身分証明書)などをお持ち頂ければ、引き出すことができます。」でした
- ATMではなく窓口へ行く。Q22が挙げたのは、長く動いていない預金の引き出しに時間がかかること、そしてATMではなく窓口での手続きが想定されること
- 合併していたら、引き継いだ銀行へ。Q17の案内は、取引のあった金融機関を引き継いだ現在の金融機関で手続きする、というものでした
- 名義人が亡くなっている場合は相続人が請求する。Q18によれば、金融機関所定の手続きを経て相続人が引き出せます
受け取れる金額は目減りしません。Q21によれば、支払われるのは元本に元の預貯金契約に基づく利子相当額を加えた額で、元の契約どおりの額が支払われます。10年寝かせた罰金のようなものは、制度上ありません。
ただし、口座そのものの扱いは金融機関ごとに変わります。
| 金融機関 | 移管後の通帳・カードの扱い | 口座の継続利用 |
|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 「お手元の通帳・キャッシュカードはご利用いただけなくなります。当行本支店の窓口でお手続きが必要です。」 | 継続利用は可能。ただし「一部の口座で同一の口座番号のご使用ができない場合がございます」 |
| ゆうちょ銀行 | 「ATM・ゆうちょダイレクトの利用ができなくなることがございます。」 | 窓口手続きにより「払い戻し(解約)や引き続きのご利用が可能です」 |
問い合わせ先を間違えないことも大切です。休眠預金等の有無や引き出し手続きの案内は、法第6条により取引のあった金融機関が対応します。預金保険機構は個別の口座について答えません。同機構は問い合わせ区分の一覧で、移管や返還に係る制度・法律については金融庁、民間公益活動への活用については内閣府を案内しています。なお、同機構の休眠預金管理業務課(03-6262-6828)は、令和7年度の公表資料に関する問い合わせ先として記載されている番号です。
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民営化前の郵便貯金だけは、20年2か月で権利が消える
ここまで「期限はない」と書いてきました。例外がひとつあります。2007年10月1日の郵政民営化より前に郵便局へ預けた定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金です。これらは休眠預金等の対象外で、代わりに権利が消滅する仕組みが働きます。
管理しているのは、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構です。同機構が2026年8月20日付で公表した資料には、こう書かれています。満期後20年を経過してもなお払戻しの請求等がない場合は「権利消滅のご案内(催告書)」を送付し、その後2か月を経過しても請求等がない場合、その郵便貯金に関する権利は消滅する、と。
この期限は実際に効いています。同資料が載せている権利消滅額は、令和3年度が457億円。以降は令和4年度197億円、令和5年度155億円ときて、令和6年度は202億円でした。
注意したいのは、自動継続だと思い込んでいる定期郵便貯金です。同じ資料の注記に「自動継続扱いとしていた定期郵便貯金も、民営化以降(平成19年10月1日以降)は自動継続せず、満期となっていますのでご注意ください。」とあります。20年の時計は、本人が気づかないうちに動き始めていた計算になります。
権利が消えた後でも、道が完全に閉じるわけではありません。同機構は、真にやむを得ない事情があったと認められた場合には払い戻される、と説明しています。この運用は2024年(令和6年)1月から見直されました。実績は同機構が「権利消滅の扱いとなった郵便貯金の払戻しの件数及び金額」として公表しています。令和7年4月から令和8年3月までの審査は1,777件・11.6億円。承認も同じ1,777件・11.6億円と並んでいます(2026年3月31日現在)。
ただし、事情の説明を求められる手続きに入るより、期限内に請求するほうがはるかに簡単です。実家の引き出しに古い通帳や証書が眠っていないか、一度見ておく価値があります。
よくある質問(FAQ)
休眠預金等になったら、もうお金は戻らないのですか?
残高が1万円未満だと、本当に通知は来ないのですか?
通帳に記帳すれば、休眠預金等になるのを防げますか?
通帳もカードも印鑑も見つかりません。それでも手続きできますか?
亡くなった親の古い郵便貯金の証書が出てきました。どこへ行けばいいですか?
- 2009年1月1日以降の最終取引から10年動きがない預金等は休眠預金等になり、預金保険機構へ移る。金額の下限はなく、利子の入金では時計が止まらない
- 9年経過後に電子公告、その前に元本1万円以上の口座へ通知。基準額の一万円は施行規則第7条第4項に明記。1万円未満と住所未更新の口座には通知が届かない
- 記帳で止められるかは銀行次第。ゆうちょ銀行は異動事由に掲載、三菱UFJ銀行は普通預金では認可を取っていない(定期預金では取得済み)。どこでも通用するのは入出金
- 令和7年度の移管は586万9,928件・1,870億8,027万3,439円、払い戻しは54万5,396件・587億3,378万2,888円。1件平均は移管が約3万1,871円、払い戻しが約10万7,690円
- 引き出しは取引のあった金融機関の窓口で。期限なし・元本+利子相当額。通帳を失くしていても本人確認書類で手続きできる
- 例外は民営化前の郵便貯金。満期後20年+2か月で権利が消滅し、令和6年度だけで202億円が消えた。令和8年7月末で2,639億円が未請求のまま残る
